平成28年度の税制改正により、水廻りの増設やその付帯工事など、3世代同居のために行うリフォーム費用の一部を、所得税から控除できるようになりました。
            政府による減税の趣旨は、「一億総活躍社会の実現」の少子化対応策の一環として、若い世帯が夫婦ともに生き生きと働きながら、子育てがし易くなる環境を整えるために、両親との同居を望む人達の背中を押すことです。
            二世帯住宅研究所では、これまで二世帯住宅における子育てのメリットを調査すると共に、キッチン や浴室などを独立して設け、生活を分けて家事を分離しつつ、育児協力が日常的に行われている実態を明らかにしてきました。また、築30年前後の二世帯住宅 が次の世代に引き継がれる際のリフォームの実態についての調査を行ってきました。
            今回対象となる「多世帯同居改修工事」の内容を見ると、伝統的な「べったり同居」ではなく、二世帯で生活を分け独立して暮らすための「水回りや玄関の増設」が促進される内容となっています。また、ローンだけではなく、自己資金による投資も対象とされるなど、よりリフォームの実態に合った制度です。
            それでは、具体的にどういう場合に減税されるのか、内容を見てみましょう。
           
          
            同居のためのリフォーム減税、対象工事は?
            具体的な対象工事は、2つの世帯が同居するのに必要な増築、改築、修繕や模様替えですが、工事内容には、キッチン、バス、トイレ、玄関のうち、少なくとも1つを“増設”する工事(改修後にいずれか2つ以上が複数となる)を含むものです。同居のストレスを抑え、メリットを享受しやすくするために、キッチン、浴室、トイレなどの水まわりがそれぞれの世帯にあることは重要なポイントです。また、工事費用の合計額が50万円を超えることが条件です。
            Q:古くなった我が家のキッチン、バス、トイレ、玄関を、同居することになった息子家族のために新しく取りかえたい。控除制度は適用できる?
            A:適用対象工事は、必ずどれか1つでも“増設”し、より気兼ねなく暮らす二世帯住宅へと改修することです。よって、ただ古くなった設備を新しくするのみの場合は適用外となります。
            Q:簡易なミニキッチンの増設でも適用できる?
            A:キッチン増設の定義は、「台所流し」及び「ガスコンロ(IHヒーター)」の設置工事であり、小型ユニット型のキッチンでもこれらがあれば適用可能です。
            
            
           
          
            同居のためのリフォーム減税、控除額は?
            自己資金でリフォームを行った場合も、同じく上限250万円を工事限度額に、最大25万円を税額控除できます。
              また、借入金を利用してリフォームを行った場合は、上限工事費250万円に係る住宅ローンの年末借入残高の2%相当額を、5年間(最大62.5万円)にわたり税額控除できます。
            (注)リフォーム投資型減税(自己資金のみ)とリフォームローン型減税(ローン借り入れ)の併用はできません。
            
              1.リフォーム投資型減税(所得税)
                ・対象工事に三世代同居対応工事を追加
                ・工事費等の10%を所得額から控除
                (対象工事限度額250万円)
                
                  
                    
                      |   | 
                      限度額 | 
                      最大控除額 | 
                    
                    
                      | 耐震 | 
                      250万円 | 
                      25万円 | 
                    
                    
                      | バリアフリー | 
                      200万円 | 
                      20万円 | 
                    
                    
                      | 省エネ | 
                      250万円 | 
                      25万円 | 
                    
                    
                      | 三世代同居 | 
                      250万円 | 
                      25万円 | 
                    
                  
                
               
              2.リフォームローン型減税(所得税)
                ・2.0%対象工事に三世代同居対応工事を追加
                ・ローン残高の一定割合を所得税額から控除
                
                
                  
                    
                      | 控除率 | 
                      対象工事限度額 | 
                      最大控除額 | 
                    
                    
                      | 2.0% | 
                      バリアフリー・ 
                        省エネ・ 
                        三世代同居 
                        工事限度額 | 
                      250万円 | 
                      62.5万円 
                        (5年間) | 
                    
                    
                      | 1.0% | 
                      その他 
                        工事限度額 | 
                      750万円 | 
                    
                  
                
               
             
            適用期限:平成31年6月30日まで
            Q:リフォーム減税対象工事との併用は可能ですか?
            A:リフォーム投資型減税とローン型減税の併用はできませんが、上記それぞれの表に記載されている対象工事毎の併用は可能です。
           
          
            二世帯住宅へのリフォームは、経済的なメリットが大きい。
            
              世帯年収が伸び悩む子育て世代がマイホームを取得するには、中古マンションを購入する場合でも約3,000万円(2014年公益社団法人不動産流通機構の市場動向データより、首都圏、70㎡換算)と経済的負担が大きいため、二世帯住宅の空きスペースを活用できることは大きなメリットとなります。
                また、相続税制改正により基礎控除額が引き下げられ、相続税の課税対象となるケースが増えました。二世帯同居(区分登記の場合などを除く)の場合、相続時に小規模宅地の特例(土地評価額8割減)の適用も受けられます。
              中古マンション購入+リフォームと比べても圧倒的に安い
中古マンション購入+リフォームとの比較
              
              ※中古マンションの費用:公益社団法人 不動産流通機構(レインズ)の市場動向データ(2014)の成約価格に、一般的な全改装リフォーム価格を加算、間取り変更なし。キッチン・浴室・トイレなどの設備機器の交換費用含む。
                ※ヘーベルハウスの二世帯リフォーム費用:全改装商品「Re MAKE もようがえ(55坪)」の費用の内、子世帯の負担を半額とした場合。キッチン・浴室・トイレなどの設備機器(二世帯分)の交換費用含む。
                ※価格は消費税込み。
             
           
          
            夫婦二人には広い我が家。40坪以上あれば二世帯住宅を検討したい。
            部屋は余っているけど、二世帯住宅はムリ・・・と考えている2人暮らしのご夫婦は多いものです。
              では、どのくらいの建坪なら二世帯住宅にリフォーム可能なものでしょうか?
            実は、目安40坪台の単世帯住宅でも、工夫次第で二世帯の実現が可能です。
              一言に、二世帯住宅といっても、コンパクトに必要最低限の水廻りを分離する家族から、各世帯にゆとりある空間を計画するものまで多種多様ですが、どうせ狭いから子世帯との同居なんてムリ!、そう思い込まずにぜひ家族で検討してみましょう。
            単世帯から二世帯住宅にリフォームチェンジ!(建物40坪の例)
            

            
            ※旭化成リフォーム(株)の提案より
            Q:限られた二世帯住宅の中で、優先的に分離すべき設備は? 
            A:30年近く両親と同居した経験のある方々のご意見によると、キッチン・洗面所は2ヶ所あってよかったという声が多く、次いで洗濯機置場やお風呂が挙がっています。
            
            ※二世帯住宅研究所調べ
           
          
            全改装リフォームなら、育児協力や介護サービス利用を考えたゾーニングが可能
            もともと二世帯住宅として設計された住まいを所有しているご家族の中には、築30年を迎え、建設当時の親世帯の逝去などで空いた片方の世帯に、新たに子世帯が暮らすといった、二世帯住宅の継承ケースが見られます。
            そんな世代交代のタイミングならではのリフォームでは、水廻りなど生活空間の分離度の高さは維持したまま、両世帯での子育てのしやすさを追求するステージへ二世帯住宅を進化させてみてはいかがでしょうか?
            例えば、子世帯がフルタイム共働きが当たり前となった現代の同居生活では、親世帯が積極的に子育て協力に関わるケースも多く、1階の親世帯が2階の子世帯ゾーンに孫のおもちゃや荷物を取りに行くなどの行為が想定されます。そこで、リフォームの際に、親世帯が、子世帯のプライベート空間を通らずに孫の部屋まで直接アクセスできる間取りにするなどの工夫をすれば、よりお互いに気兼ねなく上手に子育て協力をし合えます。 
            
            また、これから高齢期を迎えていく親世帯にとっては、将来の介護サービス利用にもに配慮した設計に変更することもリフォームをきっかけにできる安心材料です。親を身近に見守ることができる二世帯同居の魅力は大きいものですので、訪問介護サービスなどで、介護者が住まいを訪れても、家族が鉢合わせになりにくい間取りに変更しておくなどの一工夫が、更なる満足へとつながります。
            
            これまでの二世帯住宅を、イマドキの二世帯住宅にチェンジ!(建物53坪)
            
            
           
          
            減税は上手に利用。でも、一番大事なのは家族の気持ちと生活スタイルです。
            単世帯に設備を増設して二世帯住宅にすること、あるいは、今ある二世帯住宅を進化させて継承すること、どちらのリフォームも、家族みんなにとって、経済面でお得といえます。それでいて、いつも近くにいていざという時にはサポートし合える精神面でのメリットは大きく、親子同居ができる環境にある家族にとっては、リフォーム減税も同居を検討するきっかけの1つになることが期待されます。 
            しかし、親子同居で大切なのは、二つの世帯がくらしを守りながら、必要に応じてつながったり協力しあえることです。生活空間はしっかり分けて、プライバシーの尊重や生活費の分担をしっかり話し合ことが前提であることを忘れてはいけません。 
            