四季のある気候風土に寄り添い、自然に調和するように設計されていたかつての日本家屋には、縁側、通り土間、坪庭などがあった。こうした古くから伝わる日本ならではの住まいの知恵を、現代的な解釈を加えながらアップデートした都市型住宅が、ヘーベルハウスRATIUS[RD]モデルによる「余白の在る家」だ。たとえば、縁側に見られる内と外の概念を併せ持つ中間領域を現代風にアレンジした半屋外空間をヘーベルハウスは「縁(えん)の間」と命名。シェルウォールという巨大な外壁を用いて光と風と緑を巧みに取り入れた「余白」空間を創造している。シェルウォールを使った設計は、「縁の間」だけでなく、階段室に広がる「光(こう)の間」、さらに2Fの寝室から仰ぐ「青(あお)の間」にも活かされ、暮らしにゆとりをもたらしている。50代を過ぎた我々にとって、この「余白」こそが欲しい空間である。リラックスして読書したり、ひとり没頭して趣味の時間を楽しんだり、家族や仲間とのプライベートタイムにあてたり、過ごし方の幅が広がる空間が欲しいのだ。今回は、埼玉県大宮北住宅展示場に建つ「余白の在る家」を取材し、2回にわたってその魅力をお届けしたい。
シェルウォール SHELL WALL
空間に余白の美をもたらす
巨大なヘーベル版
「余白の在る家」の外壁には巨大なヘーベル版「シェルウォール」が採用されている。「シェル」とは外殻のこと。建物を巧みに囲う外殻が、外からの視線を遮りながら光や風を取り入れるのだ。この働きによって空間ぜんたいに余白の美が生まれ、日本独自の家作りの思想が継承されている。またシェルウォールは堅牢ゆえ、守られているという信頼感を得やすい。モダンでシンプルなルックスゆえ、グリーンやエクステリアが映えるという特徴もある。さらに大きな特徴として、「どこを閉じて、どこを開くか」といった設計デザインの自由度が高い点も挙げられる。それをサポートしているのが、重鉄構造による強靭な躯体なのだ。シェルウォールによって家づくりがより楽しくなり、暮らしの未来予想図がますます充実する印象を受ける
縁の間 EN NO MA
シェルウォールを生かした
もうひとつのリビング空間
日本家屋の縁側から着想を得て考案された"縁側の新しい形"、それが「縁の間」。壁と屋根に囲われたこの中間領域は、人の背丈よりも高いシェルウォールによって外からの視線を感じることなく、自由な楽しみ方ができるプライベート空間。室内のリビングと「縁の間」が一体になり、外への視界も広がる。「縁の間」で過ごすひとときは、内にいるような安心感と、外にいるような開放感を同時に味わえてうれしい。その心のゆとりが日々の暮らしには欠かせないのだ。今回は、訪ねてきた仲間に「縁の間」でアウトドア料理をもてなす風のアレンジを施してみた。心地よい光と風を感じながら過ごす初夏の午後のひとときは格別だ
室内のリビングから窓越しに「縁の間」を撮影。シェルウォールのおかげでリビングのカーテンが不要になり、開放感が生まれる。リビングから「縁の間」を眺める楽しみもあるのだ
ダイニングキッチンサイドから「縁の間」のある半屋外空間を望む。プライベートを守りながらも視界が広がる空間演出
1F LDK
リアルサイズの
心地よいリビング空間
「余白の在る家」は、各スペースともリアルサイズで設計されているので、部屋づくりの参考になりやすい。こちらは1Fに広がる25.3帖のLDK空間。ヘーベルハウス独自の住環境シミュレーション「ARIOS」を通じ、季節や時間ごとの日照、日射、通風、採光などを細かく計算したうえで最適なゾーニングや開口部が設計されている。そのうえで「ロングライフ全館空調」システムを採用しているので、年中いつも快適に過ごせる。写真右手の半屋外に「縁の間」とオープンエアのテラスが広がる。漆喰塗りの天井や壁、さらに北欧風インテリアの設えも美しいので、室内のアレンジは最小限にとどめ、リビングスペースに敷いたBasShuのコットンラグとクッションカバーのみのアレンジとした。
北欧スタイルのインテリアが映えるダイニングキッチン。キッチン奥側の開口部からも心地よい光が射し込み、ほどよい明るさをもたらしている
季節ごとにアートやオブジェを飾る習慣も身に付けたい。今回はリビングのシェルフの上に夏のハワイを印象づける絵画をアレンジしてみた
1FのLDKは、室内の壁だけでなく天井もすべて漆喰塗りで仕上げている。自然光が射しこむと、コテ仕上げの凹凸部が浮かび上がって美しい
天然木を使用したインテリアの色調に合わせた、アースカラーの床タイル。これも「50歳からのヘーベルハウス」に相応しい大人っぽいディテール演出
「インビテーションラウンジ」と名付けた広々としたエントランスホール。ベンチソファ、ミニテーブルなども余裕で置ける。靴を履いたまま寛げるリビングという感覚で活用できるユーティリティスペースだ
50代になると、善いものを見極める力が自然に身に付いてくる。そして当然のように「終の棲家」が欲しくなる。そんな我々にとって、本当に住みたい家の条件とは、まず家の躯体構造が「つよい」こと。安全かつ安心して暮らせる家は絶対条件だ。つぎに考えたいのが「やさしい」家。地球にやさしく、住まう人にやさしい家。リフォームやリノベーションも容易にできる家。何世代にもわたって住み継ぐことができる、そんな条件も「余白の在る家」は満たしている。そしてこれが最も重要なのだが、われわれが選ぶ終の棲家は、「たのしい家」でなければならない。「余白の在る家」には、今回ご紹介した「縁の間」とLDK以外にも、ワクワクする空間が存在する。玄関を跨いだ瞬間、階段室を彩る「光の間」(こうのま)を見て、筆者はそのワクワク感を抑えらず、「階段下の余白空間にレコードジャケットとプレーヤーを持ち込みたい」と欲が増した。さらに2Fへ上がると、寝室から「青の間」(あおのま)という空中庭園のような「余白」を堪能できる。「縁の間」「光の間」同様、シェルウォールが巧みに生かされていて、近隣からの視線をシャットアウトしながら豊かなプライベート空間を育んでいる。ここから眺める四季折々のシンボルツリーの光景はきっと美しいにちがいない。そんなことを思いながら撮影を進めていった。次号は「光の間」、「青の間」を中心に「余白の在る家」を紹介したい。お楽しみに!
大宮北住宅展示場
大宮北住宅展示場
埼玉県さいたま市北区植竹町1丁目816-1 大宮北ハウジングステージ
tel. 048-662-6031(10:00-17:00 火・水定休)
※写真の設えと実物は一部異なります
取材協力:
sono meguro
BasShu
ディスクユニオン下北沢店
Kads Miida Store