
老舗ホテルゆえの趣
長い歴史を経てようやく醸しだすことができる叙情豊かな雰囲気。この無二の情調と、窓の外に広がる日光の四季の光景を存分に楽しむことができる。それが「日光金谷ホテル」の魅力です。細部にまで装飾が施された凝った建築意匠や、東照宮を連想させる装飾彫刻は、クラシックホテルの趣を深め、場所と時代を忘れるような不思議な感覚を覚えるかもしれません。古い型ガラスを通して眺めるわずかに歪んだ景色。自分の「フレーム」を探して窓辺に椅子を運び、佳景の光を待つ時間は、日常生活では味わえない贅沢でしょう。秋のつるべ落としの陽が沈み、薄暮の時間を迎えた頃に、室内のスタンド照明を点け、室内の小さな灯りが反射する窓ガラス越しに、窓の外に広がる紅葉を眺める。早朝の紅葉もきれいですが、室内の暗さと光色とのバランスが整う、夕方の秋の日光は特に美しいと思います。とりわけ別館122号室は、ニ方向に開口部が設けられているので、贅沢な紅葉を楽しむことができます。
新旧を織り交ぜた照明技法
クラシックな趣を味わうには、ロビーや階段回り、ダイニングがお勧めです。エントランスの回転扉の上には、社の虹梁のような彫刻が、柱の頂部にも細かな柱頭彫刻が施され、階段まわりには赤い宝珠が掲げられています。歴史を感じさせるこうした意匠は照明で際立たせられ、古く暗い感じはなく、老練ながら明朗な明るい空気を生み出しています。こうした演出や機能のための照明器具は、クラシックな意匠を壊さないように、目立たないよう巧みに仕込まれ、これに対し、昭和初期を思わせる、古くからの照明器具は重厚なインテリアの一部としても活かされています。この新旧の灯りの使い方は見事で、ホテルを訪れるたびに、室内の光が洗練されている様子が窺えます。ダイニングでは、老舗ホテルらしい真っ白なテーブルクロスが天井からの光を柔らかく照り返し、また、卓上に並ぶ磨きこまれたシルバーのカトラリーにはきらめくような光が反射して、美しい装飾と相まって華やいだ雰囲気を味わうことができるでしょう。
「楽園のあかり」が、みなさんの暮らしの灯りを考え直すきっかけになりますように。


三好和義
みよし・かずよし ● 1958年徳島生まれ。85年初めての写真集「RAKUEN」で木村伊兵衛賞を受賞。以降「楽園」をテーマにタヒチ、モルディブ、ハワイをはじめ世界各地で撮影。その後も南国だけでなくサハラ、ヒマラヤ、チベットなどにも「楽園」を求めて撮影。その多くは写真集として発表。近年は伊勢神宮、屋久島、仏像など日本での撮影も多い。近著は『死ぬまでに絶対行きたい楽園リゾート』(PHP)。日本の世界遺産を撮った作品は国際交流基金により世界中を巡回中。
ご紹介頂いた宿 : 日光金谷ホテル
栃木県日光市上鉢石町1300 tel. 0288-54-0001 http://www.kanayahotel.co.jp/
「朝のひかり 夜のあかり」に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
No reproduction or republication without written permission.