介護施設の種類・入居条件・公的支援とは?高齢者の住まい選びを解説

老後の心配から、高齢者向け施設への入居を検討している方の中には、介護施設とはどんな施設なのか気になっている方も多いでしょう。安心して老後を暮らすためにも、自分に合う高齢者向けの住まいを見つけることが大切です。
この記事では、介護施設とはどのような施設なのか、高齢者向けの住まいの種類や選ぶ際のポイントなどを解説します。老後の住まい探しにお悩みの方は、参考にしてください。

介護保険法における介護施設とは
老後の住まいについて考える際、老人ホームや介護施設を想像する方が多いと思いますが、それらの違いを明確に理解できていないという方も少なくありません。
介護保険法に定められている介護施設は、大きく以下の3つに分類されます。
- ・特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
- ・老人保健施設(介護老人保健施設)
- ・介護医療院
それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは、「特養」とも呼ばれており、介護が必要な高齢者を対象としている施設です。介護を常時必要とし、なおかつ介護を自宅で受けることが困難な方(原則要介護3以上)が対象です。
食事や入浴・排泄介助などの身体介護や清掃・洗濯などの日常的な生活支援だけではなく、リハビリ・レクリエーションなどの介護サービスを受けられます。
所得や資産に応じて費用負担が軽減されることから、供給に対して需要が上回っているため全国的に入居待ちが多いです。
老人保健施設(介護老人保健施設)
老人保健施設(介護老人保健施設)とは、「老健」とも呼ばれており、特養のように長期または常住するのではなく、在宅復帰や在宅支援を目指すことを目的とする短・中期的な施設です。
退院後自宅ですぐに生活を営むことが難しいようなケースで、食事・入浴・排泄などの身体介護、医療的管理、リハビリ(機能訓練)や介護・医療などを通して心身機能の維持回復を図ります。
特養のように長期間居住することができず、入居期間は原則3~6カ月程度である点に注意が必要です。
介護医療院
介護医療院とは、重篤な身体疾患を有している方や身体合併症を有している認知症の方に長期療養を行うことを目的とする施設です。
介護療養型医療施設に代わる施設として、2018年に設置されました。
介護度が高い方に充実した医療的ケアとリハビリを提供しているのが特徴です。利用者の多くは医療施設から入居しています。利用者の終末期を支える役割も担っています。
高齢者向けの住まいとは

高齢者向けの住まいは、介護保険法に定められている介護施設だけではありません。ほかにも以下のような住まいが高齢者向けの住まいとして挙げられます。
- ・住宅型有料老人ホーム
- ・介護付き有料老人ホーム
- ・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- ・軽費老人ホーム(ケアハウス)
- ・グループホーム
それぞれの住まいの特徴を詳しく説明していきます。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームとは、自立した生活が可能な高齢者から介護が必要な高齢者までを、幅広く受け入れている高齢者向け施設です。
スタッフの見守りサービスや食事の提供、掃除・洗濯といった日常的な生活支援サービスに加えて、必要に応じてデイサービスや訪問介護などのサービスを受けられます。
外部サービスを利用して受けられる介護に限界が生じた、医療への依存度が上昇した際は、退去しなければならない可能性がある点に注意が必要です。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは、住宅型有料老人ホームと同様、自立した生活が可能な方から介護が必要な方までを幅広く受け入れている高齢者向け施設です。
介護付き有料老人ホームは、一定の基準をクリアした特定施設入居者生活介護と呼ばれる指定を受けているという点で住宅型有料老人ホームとは違います。
要介護1~5の認定を受けた要介護者が対象の支援型、自立や要支援、要介護の方が対象の混合型があります。
サービス内容は住宅型有料老人ホームとあまり変わりませんが、支援型は要介護者向けで介護度の高い方も対象としていることから、住宅型有料老人ホームよりもサポート体制が充実しているといえるでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、自宅と同様に自由な生活を送れる高齢者向け施設です。歳以上の高齢者を対象としており、廊下幅が広く、段差がないなど高齢者が安心して暮らせるバリアフリー設計の賃貸住宅となっています。
安否確認や生活相談サービスなどの提供が義務化されており、食事提供も受けられるのが一般的です。介護が必要になった場合には、住宅型有料老人ホーム同様に、外部サービスを利用して必要なサポートを受けられます。
ただし、介護度や医療への依存度が高くなった場合には、施設から退去しなければならない可能性があるという点に注意が必要です。
軽費老人ホーム(ケアハウス)
軽費老人ホーム(ケアハウス)とは、無料もしくは低額な料金で入居できる、主に低所得な高齢者向け施設です。
身体機能の低下などの理由から、自宅で生活することに不安を抱いている方かつ、家族による支援を受けるのが困難である方が対象です。
主に自立した方が対象の一般型ケアハウスと、要介護度が上がっても住み続けられる介護型ケアハウスに分類されます。
グループホーム
グループホームとは、65歳以上で要支援2以上の認知症の方が、専門的なケアを受けながら少人数で共同生活する高齢者施設です。
利用者は、自身の能力に応じて自立した生活を送りながら、必要な部分についてはサポートを受けて生活することで、自尊心と認知機能を保ったまま生活できます。
施設の所在地に住民票を持っている方のみ入居できる点に注意してください。
介護施設の入居条件とは?要介護度ごとの選び方

介護施設ごとに入居条件は異なります。特に「要介護度」が重要なポイントです。ここでは、施設ごとの入居基準や要介護度別の選び方を解説します。
介護施設の入居条件の基本ルール
介護施設の入居には、一般的に「年齢」「要介護度」「健康状態」「住民票の所在地」などが関係します。
例えば、特養では原則要介護3以上の方が対象で、住民票がある自治体の施設に申し込まなくてはなりません。一方、有料老人ホームまたはサ高住は要介護度に関係なく入居できる場合があります。
ただし、施設ごとに医療依存度の高い方の入居が難しいケースもあるため、事前に確認が必要です。
要介護度別に選ぶべき施設の種類
要介護度によって、以下のように適した施設の種類が異なります。
- ・要支援1~2・要介護1の方
比較的自立した生活が可能なので、「住宅型有料老人ホーム」や「サ高住」が最適。必要に応じて外部の訪問介護サービスを利用しながら生活可能。
- ・要介護2~3の方
日常生活のサポートと介護の両方が必要になってくるため、「介護付き有料老人ホーム」や「特養」「老健」などが選択肢になる。
- ・要介護4~5の方
医療的ケアの必要性が高まるため、「特養」「介護医療院」などが最適。老健は在宅復帰を目指す施設のため、長期入居には不向き。
自身や家族の状態に合わせて、適した施設を選ぶことが大切です。
認知症の方が入れる施設とは?
認知症の方が入れる施設には以下のようなものがあります。
- ・グループホーム
軽度~中等度の認知症の方が少人数で共同生活を送る施設。住民票がある自治体の施設に限られるため、地域密着型の施設となる。
- ・特養
認知症の方も受け入れているものの、要介護3以上が対象。介護スタッフによる日常生活のサポートが受けられる。
- ・介護医療院
重度の認知症で医療的ケアが必要な方向け。医療と介護が一体となったケアが受けられ、終のすみかとしても選ばれる。
認知症の進行度合いや医療ニーズに応じて、最適な施設を選ぶことが重要です。
介護施設入居のために準備すべきこと
介護施設へスムーズに入居するためには、事前準備が欠かせません。主な準備事項として、以下の点を確認しておきましょう。
- ・入居条件の確認
希望する施設の要介護度や健康状態の基準をチェックし、対象となるか確認。
- ・入居費用の計画
初期費用・月額費用・そのほかの追加費用を確認し、無理のない資金計画を立てる。
- ・申し込みと面談の準備
特養などは、申し込み後に長い待機期間があるため、早めの申し込みが必要。また、入居前の面談が行われることが多く、本人の状態や希望を明確に伝える準備が必要。
- ・必要書類の準備
介護認定の書類や健康診断書、身元保証人の情報など、施設ごとに必要な書類が異なる。事前に確認しておくことが大切。
これらの準備を進めることで、希望する施設へのスムーズな入居が可能になります。

介護施設の見学時にチェックすべきポイント

介護施設を選ぶ際は、実際に見学して施設の環境やサービスを確認することが重要です。設備の清潔さやスタッフの対応、食事の内容といった、事前にチェックするべきポイントを押さえておきましょう。
ここでは、見学時に確認すべき具体的なポイントを解説します。
見学時に確認すべき施設の設備と環境
施設の設備や環境が整っているかどうかは、入居後の快適さに直結します。見学時には、以下の点をチェックしましょう。
- ・施設内の清潔さ:共用スペースや居室が清掃されているか、異臭がしないか。
- ・バリアフリー設計:手すりや段差の有無、車いすでも移動しやすい構造か。
- ・浴室・トイレの使いやすさ:介護が必要な方でも安全に使える設備が整っているか。
- ・緊急対応システム:居室や共用スペースにナースコールが設置されているか。
また、居室の広さや日当たり、外の景色など、生活する上での快適さもあらかじめ確認しておきましょう。
スタッフの対応や雰囲気においてチェックする点
介護施設の質は、スタッフの対応によって大きく左右されます。見学時には、以下の点を確認しましょう。
- ・入居者への接し方:丁寧で温かみのある対応をしているか。
- ・スタッフの人数と配置:特に夜間の職員数が十分か。
- ・介護スタッフの資格:介護福祉士などの有資格者がどの程度いるか。
- ・職員の雰囲気:忙しすぎて余裕がない様子ではないか、笑顔があるか。
また、できれば実際に介護を受けている入居者の表情も確認し、満足しているかどうかを事前に確認しておくとよいでしょう。
食事やレクリエーションの内容を確認
食事の内容やレクリエーションは、生活の質に直結する重要な要素です。
- ・食事のメニュー:栄養バランスが取れているか、味付けは適切か。
- ・嚥下(えんげ)困難者への対応:刻み食・ミキサー食などの提供が可能か。
- ・食堂の雰囲気:食事の時間が楽しく過ごせる環境か。
実際の食事を試食できる施設もあるため、事前に確認するとよいでしょう。
また、レクリエーションの種類や頻度も重要です。
- ・レクリエーションの内容:体操、ゲーム、趣味活動など多様なプログラムの有無。
- ・イベントの頻度:季節ごとの行事や外出イベントが企画されているか。
- ・個別対応の有無:集団参加が苦手な方にも楽しめる内容が用意されているか。
施設の評判を調べる方法
見学だけでは施設の実態が分かりにくいこともあります。入居後のギャップを防ぐため、以下の方法で施設の評判を調べましょう。
- ・インターネットの口コミサイト:介護施設の口コミサイトやSNSで評判を確認。
- ・自治体や地域包括支援センターの情報:公的機関からの客観的な評価を確認。
- ・入居者や家族の声を聞く:実際に利用している人の意見を参考にする。
- ・見学時に利用者と話す:可能であれば、入居者や家族に直接話を聞く。
特に、長く住んでいる入居者の様子を観察し、満足度を判断することが大切です。
介護施設選びに役立つ公的支援制度

介護施設の費用は高額になることが多いですが、公的支援制度を活用することで、負担を軽減できます。特に、介護保険制度をはじめとする各種の助成制度をうまく活用すれば、自己負担額を抑えることが可能です。
ここでは、介護施設を選ぶ際に役立つ主な公的支援制度について紹介します。
介護保険制度を活用した費用負担の軽減
介護保険制度を利用すれば、介護施設の費用負担を抑えることができます。
- ・介護保険適用の施設
特養、老健、介護医療院は自己負担1~3割。
- ・適用外の施設
有料老人ホームやサ高住には適用されません。入居者が訪問介護やデイサービスを利用する際には適用可。
介護保険を利用するには、市区町村で要介護認定または要支援認定を受けなくてはなりません。認定結果で補助額が違うため、事前に確認しましょう。
低所得者向けの負担軽減制度
介護施設の費用負担が厳しい場合、以下の公的支援制度を活用することで、自己負担額を抑えることができます。
- ・高額介護サービス費制度
1カ月の介護費用が一定額を超えた際、超過分が払い戻される制度。住民税非課税世帯の上限は月額24,600円。
- ・特定入所者介護サービス費(補足給付)
特養や老健の入所時に居住費・食費の負担を軽減。所得や資産状況によって減額される。
- ・生活保護受給者向けの支援
生活保護受給者は、特養やケアハウスなど指定施設の費用が、全額または一部公費負担となるケースがある。
利用には、市区町村の窓口での申請が必要です。
住宅改修や福祉用具の助成制度
自宅での介護を継続しながら施設入居を検討する場合、以下の制度が利用できます。
- ・住宅改修費の支給制度
手すり設置や段差解消などの改修費用を補助。上限20万円、自己負担は1~3割。
- ・福祉用具の貸与・購入補助
介護ベッドや車いすなどを1~3割負担でレンタル、または年間10万円までの購入補助が利用可能。
適用には、要介護認定が必要です。
介護施設の費用負担を減らすそのほかの方法
公的支援以外にも費用負担を軽減する以下のような方法があります。
- ・民間の介護ローン
初期費用や月額費用を分割払い可能。ただし、金利負担に注意。
- ・医療費控除の活用
介護施設の費用の一部が確定申告で控除対象(介護付き有料老人ホームの費用の約50~60%)。
- ・施設の比較検討
同じエリアでも費用が違う。複数施設を比較し、自治体の相談窓口を活用すると効果的。
施設選びを慎重に行い、負担を抑える工夫をしましょう。
高齢者向けの住まいを選ぶポイント
高齢者向けの住まいは種類が数多くあるため、「どのような基準で選べばいいのか分からない」と感じた方も多いでしょう。
高齢者向けの住まいを選ぶポイントとして、以下の2つが挙げられます。
- ・必要としているサービスが提供されているか
- ・負担可能な費用設定かどうか
高齢者向けの住まいによって受けられるサービスは異なります。必要としているサービスが何かを明確にすれば、目的に合った高齢者向けの住まいを選びやすくなるでしょう。
将来に備えるために、充実したサポートが受けられる高齢者向けの住まいに入居したいと考えている方も多いでしょう。しかし、サポートが充実しているほど費用設定が高いため、無理なく負担できる費用設定か、十分なサポートが受けられるか総合的に判断しましょう。
まとめ
老後が不安という理由から、介護施設や老人ホームなどに入居する方も少なくありません。しかし、介護施設や老人ホームなどの高齢者向けの施設は誰でも利用できるわけではなく、条件を満たしている方しか入居できない点に注意してください。
高齢者向けの住まいは数多くあり、多種多様なサービスが提供されています。「想定していたサービスを受けられなかった」「費用負担が大きくて困った」などのトラブルを防ぐためにも、施設の種類や違いなどをしっかり把握してから自身に合った住まいを選択しましょう。
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